武田晴信100首和歌 45


秋 田 風

山田守る
  賤か(しずか)庭前に
      音つれて(訪れて)
    稲葉もそよぐ
        秋の夕風

~~~~~引用  武田晴信朝臣百首和歌 


意訳
 山や田を守る農民が庭の前を通り過ぎていった。その時に夕風が吹いて音を立てて稲葉を揺らしていった。

または
 山や田を守る農民の家の庭先にも秋風が訪れて稲葉を揺らしていった。まるで風の音を感じ取れるようなありさまだ。


・・・「賤」は「いやしい」とも読む。身分の低い者に使われた。身分差別がそれなりにはっきりしていた時代なので、そんな農民が御屋形様の庭の前を通れるかと言われたら疑問が残る。というか無理かもしれない。が、歌を読んだ場所が寺だったらどうでしょう。寺の庭先を農民が歩く事はあっただろうと思うのです。

御屋形様が見たままの風景を歌ったのか、それとも「農民の家の庭」を想像して歌の情景に盛り込んだのか。謎は深まるばかりです。

武田晴信100首和歌 44

  秋 田 風

小山田の
  稲葉をしなみ
      吹く風に
   月影映す
     露の白玉


~~~~~~~引用 武田晴信朝臣百首和歌


意訳

山々の田んぼの稲を秋風が揺らしていく。稲の葉の上には夜になって露が降りている。その露に月光が反射して白く光っている。


・・・・月見の最中の歌なのかな???それともどこかのお寺にでも泊まった時の情景か?例えば「長野県千曲市八幡地籍の姥捨」にある「田毎の月」で有名な棚田のような場所で刈り取られる前の田んぼの風情を楽しんでいたのかもしれない。

秋が来たらもうじき収穫。一年で一番農村が活気づく季節がやってきた。

武田晴信100首和歌 43

    原 鹿
 
吹きまよう
  嵐のつてに
      小男鹿(さおじか)の
   声に目覚ます
     原の仮伏

~~~~~~引用 武田晴信朝臣百首和歌 ~~~


意訳

野宿の夜、浅い眠りの海をさまよっていたというのに乱れ吹く嵐の風に乗って聞こえてくる幼い男鹿の切ない声に目が覚めてしまったよ。


・・・風の吹き荒れる嵐の中で男鹿の声を聞き分けたというのは考えづらい。
荒れ狂っていたのは、切ない声で啼いていたのは、信玄公自身では無かろうか。

「鹿の声」は哀愁を呼び起こす。
悲しくて寂しくて眠れない夜が続く。

武田晴信100首和歌 42

   原 鹿

ともをなみ
  真葛の原に
     仮寝して
    寂しさ沿ふる
        小男鹿の声

~~~引用 武田晴信朝臣百首和歌~~~

意訳

(この場に)友もいないので、真葛の原でうたたねしていると寂しい。
どこかで幼い雄鹿が母を求めて鳴いている、その声がさらに寂しさをつのらせるのだ。


もしくは
供がいない状態で、真葛の原でうたたねをしてみた。
どこかで幼い雄鹿が母を求めて鳴いている、その声に己が今一人きりであるという事を自覚させられて寂しくなった。


・・・御屋形様ほどの身分ともなれば、一人きりになれる場所や時間などほとんど無かったことでしょう。
慣れぬ一人というのは最初は楽しくても時間がたつほどに寂しくなるものです。

武田晴信100首和歌 41

初 鳫(はつかり)

秋来ての
  心尽くしは
      夕暮れの
   雲のはたての
        初雁の声

~~~~~~~~~~~引用 武田晴信朝臣百首和歌

意訳
秋が来ると心が悲しく憂いに満ちてくる。
それは夕暮れの遠い遠い空に浮かぶ雲の涯(はて)から聞こえてくる初雁の声からもたらされるのだ。


・・・夕暮れは寂しく悲しい。どんなに手を伸ばしても空の向こうの雲は掴むことができなくて、手を伸ばす事すらむなしくなる。そんな中、己には届かない雲の涯から渡り鳥の雁の声が聞こえる。今年も雁が秋を連れてきた。
秋もまた寂しく悲しい。
これだけ寂しく悲しく憂う条件が揃ってるのだ。己が物思いに沈んだとしてもそれは当然のことなのだ。

って感じかな。初雁と空の解釈は古今和歌集からお借りしてきました。

武田晴信100首和歌 40

   野 虫

聞かじただ
  浅茅が小野の
      虫の声
 なおただならぬ
      秋の寝覚めに

~~~~~~~~~~~引用 武田晴信朝臣百首和歌

意訳

秋の夜中に虫の声を聞いて目が覚めた。
尋常では無い虫の鳴き方に心が落ち着かないのか、心が落ち着かないから虫の声がただ事では無く聞こえるのか。

*********
ただならぬは「虫の声」と「信玄公」両方にかかっている・・・のだと思う。たぶん。

武田晴信100首和歌 39

庭 荻

去らぬだに
  物思う庭の
     荻原や

 末吹きなびく
    秋風の声

~~~~~~~~~~引用 武田晴信朝臣100首和歌 

意訳
そうでなくても庭の荻を見ていたら考え事に沈んでしまうというのに。
秋風が荻の先を揺らし音をたてるのだ。
どうして考え込まずにいられよう。


武田晴信100首和歌 38

  庭 荻

荻の葉に
  身にしむ秋の
     風そへて
 
 さらに物問う
      庭の面かな

~~~~~~~~引用 武田晴信朝臣100首和歌


意訳
 身に沁みいる冷たい秋の風が荻(芒に似た秋の草)の葉を渡っていく。
古来より荻は神を、御霊を招くのだという。
風により囁く荻の声は神の声でもある。

荻の揺れる庭を眺めながら、また物思いにふけるのだ。 



~~~~~~~~
「しみる」というのは感じると言う事。
静かな秋だからこそ、徒然のことを考えてしまうのでしょう。
考え込みすぎて、身体を冷やさなければ良いのですが(笑)

武田晴信100首和歌 37

七 夕 雲

七夕の
  雲の衣を
     敷妙の
   枕さだめぬ
      天の川風

~~~~~~~引用 武田晴信朝臣100首和歌


意訳
  
七夕の夜である。
牽牛が織姫を横たえるため、天の川の風を使って雲の衣に枕を置いている。
(昔は布団が無かったので着物を床に敷き眠っていた。そのため『雲の衣』なのである
 


~~~~~~~~
100首和歌の数少ない恋の歌です。
御館様ってば浮気の釈明書書くくらい恋多き男なのに、恋の歌が少なすぎる。
寺へ納める和歌だから色っぽいのは除いたのか?
それとも恋の歌は全部お相手に贈ってしまったのか。
はたまた和歌の師匠達が僧侶ばかりだったので恋の歌は教わらなかったのか??
もしかして「現実の恋は甘くない・・・・。(遠い目)」とまで達観してたのか?????

一休禅師とまでは行かなくても、もうちょっと色っぽい歌も残っていれば良かったのになあ。

武田晴信100首和歌 36

 初 秋 露

秋来ぬと
  軒の忍に
    風冴えて
 袖に知られぬ
     庭の朝露

~~~~~~~~引用  武田晴信朝臣100首和歌 

意訳
 秋がやってきたと様々な自然が教えてくれる。
屋根に生えた忍(シダ植物)は冷えた風に揺られて青い葉がよりくっきりと目に映る。
朝、散歩すれば袖がしっとりと濡れて庭に朝露が降りた事がわかるのだ。


~~~~~~~~~~

露が降りたならば今度は霜が降りてやがて霜柱も立つのでしょう。
冷え込む早朝に散歩とは、信玄公は体温が高かったのかなあ。
冷え性な自分にはうらやましい限りです。

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